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職人の冒険秘話~挨拶~

日差しの強いギラバニアの地に降り立つチスイ。
この強い日差しもしばらくは浴びる事も無いのだろうと思うと少し感慨深さも感じるものである。
活気が戻りつつある市街地を事前に約束した場所に向けて歩いていくとチスイは待ち人の小さな姿を見つけた。
時間よりも少し早めについて待っているつもりだったのだが彼はそれ以上に早くに来ていたらしい。
「ずいぶん早いね」
チスイが声をかけると彼は振り向いて笑みを浮かべた。

「お互い様だろ。まだ時間より早いぞ?」
彼-クルコの言葉にチスイを笑みを浮かべて返した。

2人が少し移動して手頃な所に陣取るとチスイは預かっていたアイテム達を取り出した。クルコ、そして彼のフリーカンパニーのメンバーから修理の為に預かっていた装備達である。
「これ約束の装備ね。しっかり修理してある」
「おぉ!ありがとな。全員分預かっていくよ!」
クルコはそれらの受け取りながらそのできを確認する。命を預ける道具の具合を確認する僅かの間その目は真剣な物になるが、すぐにその表情を緩めた。
「相変わらずすげーしっくり来るよ。いいな。それで……今日は、どうした?わざわざそっちから預かってる道具を全部渡しておきたいって連絡してくるなんて」
2人のやり取りは基本的に冒険者と職人のソレだ。冒険者であるクルコから装備の修繕などの管理を任されている。特に拠点を構えているチスイの場合、多くの冒険者にはそのやり取りは実際にいずれかの拠点に来てもらうのが常だ。
クルコの場合も基本的に必要に応じてミスト・ヴィレッジまで来てもらっている。タイミングは基本的にクルコからの打診であり、チスイの方からも修繕等の終了の連絡は入れるがその後も取りに来てもらう形だ。クルコ達の場合はより円滑に冒険者稼業を進めるべく複数の装備を用意しており、その時使っている物と予備に持ち歩く物以外はチスイの所に預けっぱなしにしており、修繕が必要になったらチスイに預けて代わりに預けていた中から既に修繕が終わっている物を持っていく。それがいつもの流れになっていた。
それが今回はチスイから「こちらから持っていく」と言いだした。しかも預けている物も修繕が終わっている全てを一旦全て渡したいという。こんな事はクルコがチスイに装備を預けるようになって初めての事だった。
「うん……それなんだけどね」
チスイは少し思慮する様子を見せる。クルコにはそれも不思議だった。そもそもあまりそういう様子を見せないし何よりこの話はチスイの方から話したいから呼びだしたはずだ。「クルコ君はどこまで知ってたっけ?ボクの冒険者稼業の事」
「冒険者稼業って知ってるも何もあんたの事を知らない冒険者なんていないだろ!英雄なんだし」
「あぁうん、そうだよね」
普段と違う歯切れの悪いチスイに調子が狂うクルコはさらに首を傾げる。
「どうしたんだよ!何があっても驚かないから話してくれよーっ」
クルコはチスイの様子に痺れを切らして話すように促す。堪え性がないクルコにはこの間はなんとも言えない時間である。
「ごめんごめん。どこから話せばいいのかなと思って」
「なんか重大な話なのか?」
「そう、だね。えっとクルコ君は暁の血盟って知ってる?」
「あんたが所属してる組織だろう?名前くらいだけど知ってるよ。そう言えばなんか今大変ってのも小耳に挟んだな」
「そう、今暁の賢人達が倒れてて、今度第一世界に行く事になりそうなんだ」
第一世界、その存在はクルコも知っている。と言ってももちろん詳しく知ってる訳じゃない。こことは違うそういう世界が存在しているという知識がある程度である。というよりもそれ自体チスイから聞いたはずなのだが、チスイはその事も覚えていないような状態らしい。
「それで?俺らにも来いとか言うつもりか?」
クルコの問いかけにチスイは横に首を振るう。
「むしろ逆かな。ボクがいない間、いやもしかしたら戻ってこれないかもしれないけど、その間、原初世界をお願いしたい」
チスイの表情は至って真剣だ。言っている意味もクルコは理解している。理解しているからこそポカーンとした表情を浮かべた後、少し間を置いてクルコは大きな声を出して笑った。周囲を鑑みない大きな笑い声にチスイも驚いた表情を見せる。

「なんだそれ。バッカじゃねーの」
ひとしきり笑ったクルコが笑いを抑えた後に言った言葉にチスイは無意識にムッとした表情を見せる。
「あのねクルコ君、ボクは真剣に……」
表情とは変わって感情を抑えたチスイの言葉にそれでもクルコは大きな声こそ上げないものの笑みを崩さない。
「あんたは確かに英雄だ!その功績は素直に凄いと思うし同業者として素直に嫉妬もする。でも全部1人で背負ってるわけじゃないだろ?」
ニヤリと笑うクルコの言葉にチスイはハッとその表情を崩す。こんなチスイはクルコも初めて見るし、普段どちらかと言えばその位置に自分がいる事が多いクルコはそれが楽しくて仕方なかった。
「あんたがアラミゴの解放の力になったのは間違いないけどな!その後の貢献度なら俺らのが上だ!」
クルコらのフリーカンパニーはアラミゴを拠点に活動しその力になっている。クルコ自信それは自負していたし、チスイもその事を聞き及んでいた。
「この世界も、あんたのいう第一世界ってのも別にあんただけが特別じゃないんだよ!そんなに背負い込むことない!」
「……そうだね、ありがとうクルコ君」
「おう、英雄様に感謝されちまったぜ!これはやる気出るなぁ」
茶化すように言うクルコにチスイも思わず笑いだした。
「それよりもせっかくそんな行った事もない世界に行くんだろ?あんたも冒険者なら精一杯楽しんで来いよ!んで帰ってこい!土産話の1つでも聞かせてくれ!」
クルコも本当は理解している。冒険は決して楽しい事ばかりではない。辛い事も悲しい事も痛い事もいっぱいある。それでもそんな事ばかりではないのも事実。だからクルコは常にそういう楽しい思いを覚えておくように意識していた。それは冒険者をやっていく上で必要な事だとクルコは思う。そうじゃなければやっていけない。
「ありがとう。クルコ君、行ってくるよ」
「おう、気をつけろよ!」
チスイはどこか晴れ晴れした表情を浮かべると丁寧にお辞儀をしてクルコから離れていった。

「……こっちの世界は任されたぜ!」
去りゆく英雄の背中にクルコは小さな声でそうぶつけた。

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